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日本の臓器移植

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心臓移植のまとめ

 

  心臓移植の現状20140731現在

 

    心臓移植の現状20141231現在

 

  心臓移植の現状20151231現在

 

      心臓移植の現状20170831現在

 

      心臓移植の現状20171231現在

 

      心臓移植の現状20180831現在

 

      心臓移植の現状20181231現在

 

      心臓移植の現状20190831現在

 

      心臓移植の現状20191231現在

 

 

  The Registry Report of Heart Transplantation in Japan (1999-2013)  Circulation Journal

 

  The Registry Report of Heart Transplantation in Japan (1999-2014)  Circulation Journal

 





 

これまでの移植症例

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日本における心臓移植報告(2020年度)

日本心臓移植研究会

The Registry Report of Japanese Heart Transplantation – 2020

The Japanese Society for Heart Transplantation

 

Summary

Since the Organ Transplantation Law was passed in October 1997, a total of 512 heart transplantationsHTx have been performed in Japan as of December, 2019. Of those, 443 HTx were performed after activation of a revised Transplant Act, and 84 were performed in 2019. Most recipients had dilated cardiomyopathy; and the waiting condition of all patients was status 1 at HTx. The mean waiting time as status 1 continuously increased to 1502 days in 2018 from 892 days in 2014 in adult. After approval of the use of implantable continuous flow ventricular assist device (cf-LVAD) for bridge-to-transplantBTTsince 2011, BTT, especially using cf-LVAD increased. In 2019, 63 of 67 adult cases were supported by several types of cf-LVADs. Mean support duration also continuously increased to 1531 days in 2019 from 876 days in 2014. 50 children underwent HTx and 38 (76%) of them were BTT cases (8 in Nipro VAD, 13 in EXCOR VAD, 9 in Jarvik 2000 and 8 in other cf-VAD). Most of patients received a modified bicaval method of operation with Celsior for cardiac preservation, and all recipients were administered triple therapy with calcineurin inhibitor (cyclosporine or tacrolimus), mycophenolate mofetil, and steroid as an initial immunosuppressive regimen. Patient survival at 10 and 15 years was 89.4% and 79.1%, respectively, which is superior to that of the international registry. This surveillance documented that the results of HTx in Japan were excellent despite a severe shortage of donors and long waiting times with LVAD as BTT.

Keywords: Japanese Society for Heart Transplantation, heart transplantationHTx, bridge to transplantationBTT, left ventricular assist device

 

I.はじめに

 19992月に臓器移植法に基づく第1例目の心臓移植が行われた1)が、臓器提供は少なく、年10例前後に留まっていた。20107月に改正臓器移植法が施行され、脳死臓器提供の増加(図1に伴い、心臓移植は増加し、2019年には84件になった(図2。一方、20114月から在宅治療可能で比較的小型の非拍動流植込型補助人工心臓(ventricular assist device; VAD)がBridge to transplant (BTT)として保険償還されたことや、登録患者の増加数が移植件数を大きく上回っているため、移植待機期間は逆に増加してきている。現状では,改正臓器移植法施行後の小児2例を除く小児と成人の全例が医学的緊急度の高いStatus 1症例に限られている。日本臓器移植ネットワークへの心臓移植希望登録は199710月から開始され,2020430日現在826例が登録されている。

レジ191231-3.JPG 1 脳死臓器提供件数の推移

 

 改正法実施により15歳未満の小児からの脳死臓器提供が可能になったので、2012年に6歳未満の小児からの心臓移植も行われるようになった。2015年にはBerlin Heart EXCORが保険償還され、2019年には小児脳死臓器提供が増加し、小児心臓移植が19件施行され、小児例(18歳未満施行例)は総計50件になり、心臓移植までの待機期間も成人に比して短くなった。

 そのため、今回から、小児と成人に分けた解析結果を報告する。

 

II.心臓移植件数の推移

1.施行症例

 臓器移植法に基づく第1例目の心臓移植が19992月に施行され,同年に3例施行された。その後,心臓移植は年間5例前後から10例前後となり、改正臓器移植法が20107月に施行されて脳死臓器提供は著明に増加し2,心臓移植も2019年には84例(内、小児17例)施行された(2)。20191231日まで512例の心臓移植が施行されたが,その性別は男性369例(72%),女性143例(28%)で,年齢は1から69(平均38.9)歳であった。10歳未満:18例,1019歳:45例,2029歳:78例,3039歳:103例,4049歳:124例,5059歳:107例,60歳以上:37例であった。従来心臓移植の適応は60歳未満が望ましいとされたが,待機期間が長期に及ぶため60歳以上で移植される症例が37例あった。

レジ191231-4.JPG 2.心臓移植件数の推移(改正法施行前後、小児・成人の別)

 

心臓移植実施施設は,1997年に国立循環器病研究センター(以後国循),大阪大学,東京女子医科大学の3施設が認定され,その後,8施設[東京大学,九州大学,埼玉医科大学(現:埼玉医大国際医療センター),東北大学,北海道大学,岡山大学、名古屋大学、千葉大学]が認定され,岡山大学が辞退したので10施設となった。また,臓器移植法の改正にあわせて10歳以下の小児に対する心臓移植施設として,国循,大阪大学,東京大学の3施設が認定され,東京女子医科大学が2013年、国立成育医療研究センターが2019年に、九州大学が2020年に認定され、6施設になった。

3に示すように、改正法施行後、東京大学が比較的に心臓移植件数を増加させ、施設毎の心臓移植件数は、東京大学138例、国循133例、大阪大学128件、東京女子医科大学33件、九州大学30件、東北大学23件、埼玉医大国際医療センター13件、北海道大学6件、名古屋大学5件、千葉大学2件、岡山大学1件であった。

レジ191231-6.JPG 3.心臓移植件数の推移(施設別)

 

2.待機の状況

レジ191231-9.JPG 4.心臓移植施行前の状態

 

Nipro LA type: ニプロVAD(左房脱血)、Nipro LV type:ニプロVAD(左室脱血)、BVAD:両心室補助人工心臓。ない、BVAD 10例の右室/左室は、Nipro/Nipro 2例、Jarvik 2000/Jarvik 2000 1例、NCVC/Jarvik 2000 1例、Jarvik 2000/DuraHeart 1例、HVAD/HVAD 1例、NCVC/EVAHEART 1例、NCVC/HeartMate II 2例、BIOFLOAT/HeartMate II 1

 

わが国の心臓移植例の多くはBTT例で,当初は体外設置型Nipro-Toyobo製国循型(NiproVAD)が主に用いられたが、20114月から比較的小型の非拍動流植込型VADBTTとして保険償還された。2019年にはさらに新機種が2つ保険償還され、現在HeartMate 3, HVAD, EVAHEART, Jarvik2000などの在宅治療可能な非拍動流植込型VADが主に用いられるようになった。そのため、心臓移植時症例512例中強心剤使用例は29例にとどまり、478例(93%)がBTT症例で、非拍動流植込型VAD72%371例)を占めるようになった(図4)。

非拍動流植込型VADの装着後の生存率が高く(3年生存率87%)、待機患者が年々増加するため、心臓移植に辿り着くまでのLVAD補助期間は年々増加し、2019年では10人の患者でLVAD補助期間が5年を越えていた(図5)。

レジ191231-10.JPG 5.ブリッジ心臓移植件数の推移(補助人工心臓補助期間年数別)

 

3.レシピエントの生存率と社会復帰について

 6512例の生存率を示す。移植後10年及び15年の生存率は89.4%79.1%と国際心肺移植学会レジストリーより良好である4。死亡は39例で,死因は感染症12例、悪性腫瘍(PTLD・脳腫瘍各1例含む)6例、多臓器不全4例、致死的不整脈3例、移植心冠動脈硬化症2例、移植心不全2例、突然死2例、腎不全1例、交通事故1例、脳梗塞1例、低酸素血症1例、右心不全1例、不明 3例である。412(89)が外来通院している。

レジ191231-17.JPG 6 心臓移植後の累積生存率(国内と国際心肺移植学会統計との比較)

 

III.成人心臓移植

 

1.心臓移植件数

2に示すように,改正法施行後、心臓移植実施件数は増加したが、2010年の臓器移植法改正後の心臓移植施行数の増加および2011年の在宅での待機が可能となる非拍動流植込型LVADBTTへの保険償還に伴い,日本循環器学会心臓移植適応評価件数が著増しているため、希望登録者と実施数との差が大きくなっている。

 

2.施行症例

 462例における原疾患は拡張型心筋症が302例(虚血性心筋症合併、右胸心各1例を含む:65%)と最も多く,次いで拡張相肥大型心筋症54例(12%),虚血性心筋症49例(11%),心筋炎後心筋症15例、Becker型筋ジストロフィ12例、薬剤誘発性心筋症9例,心サルコイドーシス7例,不整脈源性右室心筋症6例,拘束型心筋症5例,先天性心疾患2例,Marfan症候群1例,産褥後心筋症1例であり(7)、虚血心筋症が増加傾向にある。

レジ191231-13.JPG 7.心臓移植の適応疾患(成人)(N=462例)

 

3.待機状況

 待機状態は全例status 1で、強心剤での待機は462例中20例で,他はすべてBTT症例であった。体外型VAD100例、拍動流植込型VAD11例で、残り331例(71.6%)は非拍動流植込型であった(図8)。これまでHeartMate IIが主流であったが、今後はHeartMate 3HVADが増加してくることが予想されている。

レジ191231-14.JPG 8.心臓移植時の状態の推移(成人)(N=462例)

 

Status 1での待機期間は,臓器移植法改正前では平均779291,362)日であった。改正後心臓移植実施数の増加以上に待機者が急増し、VADの成績が向上したため,2014年からStatus 1での平均待機期間は年々長くなり、2019年は1502日であった9

レジ191231-15.JPG 9.心臓移植時の状態とStatus 1の平均待機期間の推移(成人)

 

4.心筋保護液および移植手術

 心筋保護液は,Modified Collins液,St.Thomas液,Bredshneider液,UW液およびCelsior液が用いられてきたが,2006年以降の使用状況は九州大学以外の施設は全てCelsior液を用いている。

 術式は,Lower-Shamway法,bicaval法,modified-bicaval法などが用いられているが,2007年以降、九州大学とごく限られた症例でLower-Shamway法、最近の東北大学でoriginalbicaval法が行われている以外、小児例を含めて、わが国で開発されたmodified-bicaval法が用いられている。

 

5.免疫抑制療法

 Induction therapyとして抗CD3抗体製剤(monoclonal anti-CD3 antibodyOKT3),抗リンパ球細胞抗体(anti-lymphocyte globulinALG),basiliximab(シムレクト)が用いられてきたが,これまでに462例中137 (32%)の症例でbasiliximabが用いられており、腎機能障害例、及び後述する小児例でのinduction therapyとしての保険適応が待ち望まれている。

 初期免疫抑制療法は,全例においてカルシニューリン阻害薬(calcineurin inhibitorCNI),cyclosporinCyA)あるいはtacrolimusTac),代謝拮抗剤[azathioprineあるいはmycophenolate mofetilMMF ]およびステロイドを用いる 3者併用療法が行われている。現在ではTacMMFおよびステロイドによる3者併用療法が主流である[462例中362(78%]everolimus(サーティカン)は,初期からの使用例はなく,移植後冠動脈病変,腎機能障害,悪性腫瘍,MMF不耐容例などにおいてMMFから切り替えて用いられている。

 

 

IV.小児心臓移植

 

1.心臓移植件数

10示すように,改正法施行後すぐに小児脳死臓器提供は増加しなかったが、2019年に急増し、小児脳死臓器提供が18件あった。その結果、改正法施行まで2件しかなかった小児心臓移植は総計50件となった(2019年は17件)(図11)。2019年末までに50件の小児心臓移植が行われ、男児26例、女児24例でほぼ同数で、移植時平均年齢は10.8歳であった。ドナーは成人が10例、小児40例であった。

レジ191231-19.JPG 10. 小児脳死臓器提供件数の推移(年齢群別)

レジ191231-20.JPG 11. 心臓移植件数の推移(小児:年齢群別)

 

 施設毎の心臓移植件数は、大阪大学27例、東京大学13例、国循7例、東京女子医科大学2件であった。

 

2.施行症例

レジ191231-22.JPG 12. 心臓移植の適応疾患(小児)

DCM/RCM:拡張型心筋症拘束型心筋症合併

 

 50例における原疾患は拡張型心筋症が34例(68%)と最も多く,次いで拘束型心筋症6例、拡張型・拘束型心筋症合併例3例、心筋炎後心筋症2例、拡張相肥大型心筋症1例、Becker型筋ジストロフィ1例、川崎病1例、先天性心疾患1例であった(12)

 

3.待機状況

 待機状態は成人と異なりstatus 23例あり、残りの47例がstatus 1であった。強心剤投与が9例、体外型VADNiproVAD 8例、EXCOR 13例で、植込型VADは全て非拍動流植込型VADJarvik 2000 9例、HVAD 5例(1例は両心ともHVAD)、EVAHEART 2例(1例はNiproVADが右心の両心VAD)、HeartMate II 1例であった(図13)。

レジ191231-23.JPG

 

13.心臓移植時の状態(小児)(N=50例)

 

総待機期間は平均691日(117~2,822日)、Status 1での待機期間は平均599日(117~1,403日)、VAD補助期間は平均644日(45~1457日)であり、成人より短くなった。

 

4.免疫抑制療法

 Induction therapyとして抗リンパ球細胞抗体(anti-lymphocyte globulinALG)が1例,basiliximab29例で用いられてきた。

 初期免疫抑制療法は,CyAを用いた3例(改正法施行前の2例を含む)を除く47例でTacが、第1例目を除き49例でMMFが用いられている。

 

5.心臓移植の成績

 2例が各々18か月で肺炎、11年目に腎不全で死亡したが、残りの48例は外来通院中である(10年累積生存率96.9%)。

 国内の小児心臓移植が増加した結果、2019年に海外渡航心臓移植をした症例は1例となった。

レジ191231-29.JPG 14. 海外渡航小児心臓移植件数の推移(N=122例)

 

IV.おわりに

 臓器移植法改正後,心臓移植施行数は著明に増加し,2019年は84例となり,わが国においても,心臓移植が治療選択として定着しつつある。しかし,在宅治療が行える非拍動流植込型VADBTTとして保険償還されたこと,非心臓移植施設も認定植込型VAD実施施設としてBTT治療が行えるようになったこともあり,心臓移植希望登録者も著明に増加している。このため,待機期間がさらに延長しており、臓器提供推進への啓発は今後とも重要な課題である。

 また,小児脳死臓器提供が増加し、小児心臓移植件数が飛躍的に増加し、海外渡航心臓移植が減少したことは、 非常に意義のあることであると考える。大切な愛児の臓器提供を決意してくださった家族、その提供に関わった医療者の皆様に感謝して、この項を終える。

 

文責:日本心臓移植研究会

レジストリー担当 

福嶌教偉,小野 稔,斎木佳克

 

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